2009/02/27

『異邦人』アルベール カミュ


 ある男が、殺人を犯して死刑判決を受け、処刑されるまでの話。

二部構成になっていて一部は殺人を犯すまで、
二部は刑務所に入り死刑執行までが書かれている。


読みながら、なぜこのタイトルになったのかと考えていた。
一部では、
「自分は世俗には一切関心がないよ」
というスタンスで主人公はいる。
だから君らとは違い、私は異邦人なんだよ、
ということなんかなと思った。

例えばこの本は、「きょう、ママンが死んだ。」
で始まる。しかし母親が死んだことに対して悲しみとかそういった一切の感情は書かれていない。
また、人を殺した状況にしても
そこには、太陽がギラギラと暑かったということだけが描かれているだけである。
ここまでは、村上龍の『限りなく透明に近いブルー』にも雰囲気は似ている。

しかし、二部になってこのタイトルの理由がわかった。
死刑執行までの手順が、すべて「わたし」を除外して進んでいくのである。
殺人の動機は「わたし」の意見抜きで勝手に推測され、
確実に死刑宣告まで進んでいく。
そこに「わたし」の意見は考慮されていないし、
発言権もほとんど与えられていない。
味方である弁護士も諦め、恋人も最後には面会に来なくなる。
司祭だけが、神の加護の下に「わたし」を諭そうとしてやってくるが
そこに神の救いはない。

多数決で人を殺すことを決める際に、
当事者の意思は一切考慮されていない。
この本を読んでいると、
自分にはどうすることも出来ない不条理が確かに存在することを
再確認させられる。

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「ひとりでは
生きられないのも芸のうち」 内田樹

2009/02/18

『幽霊たち』 ポール・オースター





私立探偵ブルーのところに来た、
「ブラックを必要がなくなるまで尾行してほしい。」という依頼からこの物語は始まる。

一見単調でつまらない生活を送っているブラックを尾行することは単純な作業に思えたが、
数ヶ月、数年尾行を続けても依頼主からは決まった金額が送られてくる以外は何の音沙汰もない。

長い尾行生活を続けるうちに、ブルーはだんだんブラックと考え方や行動パターンを同化させることができるまでになる。
ある時ブルーは、そんな全く変化のない状況を変えるべく変装してブラックに接触を試みる。
ところがブラックも
「自分は探偵をしていて、今ある男を数年にわたって尾行している。」
と打ち明ける。


この物語のなかで印象深かったのは、
何日もずっとブラックの行動を監視しているうちに、
ブルーとブラックが同化していくシーン。
そのうちにブルーは、
ブラックから離れて映画舘に行ったり野球を見たりするのだが、
そういう時は、ブラックを監視していなくても彼の行動がわかるくらいにまで同化している。
ブルーが仕事に打ち込めば打ち込むほど、ブラックの中に入り込めば入り込むほど、
ブルーは自由になる。
逆にブラックから離れていけば離れていくほど、見失わないように時間とエネルギーを注がないといけない。
つまりそれだけ不自由になる。
そういうパラドックスがこの物語にはある。
読んでいるうちに、自分と他人や現実と妄想の間の境界線がわからなくなっていく。

ストーリーはじわじわと進んでいくが、確実に深みに向かっているのがわかる作品。

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『異邦人』カミュ

2009/02/17

決意表明的なものを。

思うところがあって、これからブログをはじめる。
日記というよりは、どちらかというと今まで読んだ本の感想や紹介を中心にやっていくつもり。
目的は、自分の好きな本を広めたいということ。
それと、記録することで読書の理解度が深まればいいかなという二点。

ちなみに僕の将来の予定でいくと、今のうちから手当たり次第に本を読んでおいて
自分の中に良本のストックリストを作っておく。
そして、退職後にはその良本をもう一度読み返す。
そうすることで自分がどれだけ考え方が変わったか、成長したかということを実感したい。

基本的に活字好きで、どんなジャンルの本でも読むが、
ここで紹介するのは小説中心になると思う。
大体週一冊ぐらいのペースで更新していきたい。