2009/04/11
『車輪の下』 ヘルマン・ヘッセ
ヘッセの小説の中で最も有名なもの、らしい。
ちなみに僕は、大学のゼミで取り上げられるまでヘッセ自体を知らなかった。
あらすじ
幼いころから学業優秀でエリートになることを期待されていたハンス。
周りから期待されて、それに応えることが嬉しかった。
しかしそのために、
幼いころに好きだった釣りや自然の中を散策することを
放棄することもいとわなかった。
しかし次第に大きくなっていく周りの期待に応えることがだんだん負担になってゆき、
最後には内面から壊れていく。
今から100年も前に書かれたとは思えないようなテーマ。
今していることが自分のやりたいことかそうでないことか、
時々わからなくなる。
そんなときに周りが望んでいることが
自分のしたいことだと錯覚することがある。
案外自分のことってわからないから、
そこで行動と気持ちの間に差異が発生する。
そうやって気づかない間に溜まっていく、
人格を内面から破壊するほどのストレス。
ヘッセ自身の経験を基に書かれた話で、
鬼気迫るものがある。
そこには救いはなく、悲しい結末になっている。
2009/04/06
小説「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」
前回紹介した映画の小説版です。
映画を見られた方もいると思うけど、
正直僕は映画のほうが好きです。
というのも、この本は短編集で、
「ベンジャミン~」の原作自体も結構短いものなんです。
なんで、ベンジャミンの人生がかなりざっくりとでしか描かれていない。
映画のほうが状況描写とかも細かく表現されていて、
人生を逆行するベンジャミンに感情移入しやすいんです。
ただ、これは「ベンジャミン~」に関してのみ言えることです。
短編集なんで、
他のストーリーは一見の価値あると思います。
恋愛から推理まで様々な物語が載っていますが、
特におすすめは「最後の美女」と「異邦人」。
前者は、戦争や友情からすれ違う男女の恋の話。
ありがちなストーリーだけど、男女の恋の行き違いについて書かせると
この人の右に出る人はいないと思ってます。(グレートギャッツビーしかり)
後者は、ひょんなことから大金を手に入れて隠遁生活に入った
若夫婦が精神的に堕ちていく話。
スコットフィッツジェラルド自身がモデルになっていると思われるが、
ラストのシーンで、若夫婦が精神的に堕落した自分たちを客観視して
いかに醜いかを悟るところは読んでいてぞっとした。
スコットフィッツジェラルドの作品はまだ訳されていないものが多いらしい。
この映画や、村上春樹のおかげでファンも増えていると思うし、
これからもどんどん訳していってほしいものです。
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